3月21日(月) 第75回卒業式 その3
- 公開日
- 2022/03/21
- 更新日
- 2022/03/20
3月
さて,ただいま卒業証書を手にした皆さんにこの先,ぜひとも大切にしてほしい三つのことがあります。
その一 観察眼とデッサン力
学びの道を振り返ってみますと,例えば国語では,説明文に知的好奇心を抱き,物語文を「自分だったら」「なぜこの登場人物は」と読み深め,生き方について話し合いました。理科では見通しをもって観察・実験を行い,結果を考察し,課題の解決に取り組みました。また,図画工作では,想像や思いを広げる作品を仕上げてきました。その作品の一つを,今年は体育館に飾ることとしました。
こうして学び続け,見方・考え方を磨き,豊かな感性を育んできました。そんな皆さんが,さらに中学校生活での学びの道をすすむには「デッサン力」を鍛えることも大切です。名画「モナ・リザ」や「最後の晩餐」を描き,二百枚もの解剖図を残すレオナルド・ダ・ビンチは,徹底して観察することで物事と向き合い,デッサンを繰り返したといいます。ダ・ビンチは,見える物を通して見えない物の本当の働きを探る深く見続ける観察眼をもつ「万能の天才」だったのです。皆さんには,よりまわりの自然・事象をデッサンし,真理を探究する学びの面白さにふれていってほしいものです。
その二 夢中であることと行動力
感動は,自分たちで創ろうと野外学習に臨んだ皆さんでした。「情熱の火」「絆の火」「友情の火」「信頼の火」を思い出します。タクシー分散研修に取り組む修学旅行は,行動力と判断力が問われる力試しの二日間でした。たくさんの土産話と確かな手応えを感じて学校に戻ってきました。「行動がすべての成功への基本的な鍵である」晩年九十歳を過ぎてもなお油彩画を描き,創造への情熱を持ち続けたピカソの言葉を紹介したのは,この時でした。その後も全校児童の前で頼もしさを発揮してくれた皆さんです。その皆さんが思い描く将来の「なりたい自分」とは,「夢中になれるもの」とは,何ですか。中学校生活を「自分探し・夢探し」の時間としてください。北京冬季五輪スノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得し「ようやく小さい頃の夢がひとつかなった」と,平野歩夢選手が語っていました。平野選手が大舞台で自信をもって繰り出した技はトリプルコークでした。誰も成功したことがなく,ヒントも正解もないところから,トリプルコークを磨き上げる道を選んだのです。自分にしかできないことを考え続けていたといいます。夢中で取り組む時間・経験が無駄なものとなることは決してありません。今の自分を超え,より豊かな自分づくりを目指してください。
その三 「よろこばせごっこ」と感謝
私は,よく「よろこばせごっこ」の話をしてきました。私たちの暮らしは,誰かの仕事によって支えられています。自分ですべてのことを成すことは難しく,さまざまな仕事のつながり,助け合いがあって成り立っている世の中です。中学校生活では,まわりとのつながりをいっそう実感することが多くなるばずです。皆さん一人一人が誰かの役に立つ「よろこばせごっこ」を考え,未来を切り拓く担い手へと成長してくれることを期待しています。また,その隣には感謝の言葉「ありがとう」がきっとあるはずです。
さあ,卒業生の皆さん,三つの大切なことを心にとどめ,次の空へはばたくときがきました。皆さんの輝かしい前途を祝福するとともに,今後に幸多かれと祈念し,式辞といたします。