式辞
「10年に一度の寒さ」と言われたこの冬も、少しずつ暖かくなると、「東風の門」のふもとにある紅白の梅が、一斉に花開き、春の訪れを感じる頃となりました。
本日は、公私ご多用のところ、多数のご来賓の皆さまのご臨席を賜り、卒業式を挙行することができました。高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。
また、保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。ここに至るまで、ひとえに我が子の成長を願って、精一杯、愛情を込めて育ててこられました保護者の皆様方には、心より敬意を表し、お祝い申し上げます。
そして、本日、古知野中学校を巣立つ二七七名の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。
只今、総代の久米さんに卒業証書を手渡しましたが、久米さんはもちろんのこと、ここにいる皆さんの、呼名によるさわやかな返事と、引き締まった表情や晴れやかな笑顔は、卒業証書を受け取るにふさわしい堂々としたものでした。
さて、皆さんは、新型コロナウイルスによる、様々な制限があった令和四年
に入学しました。しかし、そんな困難にも負けず、六月の日間賀島の冒険を始め、明るく元気よく学校生活を送ってきました。
その後、二年生に進級した令和五年五月に、いわゆる「五類」に移行すると、それまでの窮屈な中学校生活から解き放たれるように、五月の郡上八幡の野外学習を満喫し、学習や部活動を初めとした様々な学校の活動に、生き生きと取り組んできました。
そして、最高学年となり、すっかり和を深めた今年度の皆さんの活躍は、とても頼もしく、下級生に誇れるものでした。まさに、古中を牽引する、パワーあふれる集団になりました。
そんな皆さんは、何かと大海原を進む集団に例えられてきましたが、十六世紀のフランスの哲学者である、モンテーニュは、そんな皆さんを表現するような、こんな言葉を残しています。
「目指す港がないような航海をしていたら どんな風が吹いても助けにならない」と。
この言葉は、「目標がないと、どんな支援があっても、成長につながらない」という意味です。しかし、皆さんは、今日という日の「港」に向けて航海をしてきたからこそ、確実に成長し、進むことができたのでしょう。そんな皆さんにも、敬意を表します。
ところで、カー用品チェーンの「イエローハット」は知っている人も多いかと思います。その創業者である、鍵山秀三郎という方がいます。実は、この冬、一月二日に永眠された方です。九十一歳でした。
鍵山さんは、多くの働く人に、生き方や指針となる言葉を残されています。本校が今年度よりキーワードの一つとして用いている「凡事徹底」も、鍵山さんが使うことで広く知られるようになった言葉の一つです。
そんな鍵山さんの言葉を、ここで、もう一つ紹介したいと思います。
「他の誰かと 比べてもった 自信はもろい」
鍵山さんは、自分に厳しく、自分を律することを大切にされていたと言われています。
世界を見渡してみると、そんな考え方を実践している人は、多いように思います。メジャーリーグで活躍している大谷選手や、先ほど殿堂入りを果たしたイチロー選手などは、まさにこの考え方をベースに努力を重ねてきた人たちです。
ぜひ、皆さんも、競う相手は、「自分」であることをこれからの常として、自信を成長させていってほしいと思います。
これからの皆さんは、明るい未来とともに、ときには乗り越えなければならないことも待ち受けていることでしょう。新型コロナウイルスという世界の状況を大きく変えた事態を経験した皆さんは、その言葉の意味をよく理解されていることと思います。
そんなときは、最適解を見つけるために、ぜひ、考え、動く、「考動力」を大切にしてください。そして、常に感謝の気持ちを大切にしながら、皆さんの「夢」や「目標」に向けて、舵を取って進んでほしいと思います。そんな皆さんの姿をいつまでも応援しています。
結びとなりますが、本校の教育活動に対し、常に、温かいご支援ご協力賜りました多くの皆様に、深甚の敬意と感謝を申し上げますと共に、本日お集まりの皆様方のご健勝と巣立ちゆく皆さんの輝かしい未来の確かな飛躍を祈念いたしまして、式辞といたします。
令和七年三月七日 江南市立古知野中学校長 水谷政名