朝会より 【さだまさしさんの「償い」より: 本当の償いは一生、自分の犯した罪と歩むこと】
- 公開日
- 2015/06/29
- 更新日
- 2015/06/29
校長室から
2001年、東京都世田谷区の電車の中で、4人の少年が銀行員の男性に対し車内で足が当たったと口論の末、三軒茶屋駅のホームで4人がかりで暴行を加え、死亡させるという事件が起きました。
後日出頭した主犯格となった2名が逮捕され、裁判となりました。2人は「申し訳なく思います」などと反省の弁を述べた一方で、事件自体は酔った被害者がからんできたことによる過剰防衛であると主張し、裁判中の淡々とした態度や発言から、真に事件に向き合い反省しているかどうか疑問を抱く態度を繰り返していたそうです。
それから、東京地裁において判決公判が行われ、少年2人に対して、実刑が下されました。裁判長が2人に対し「唐突だが、君たちはさだまさしの『償い』という唄を聴いたことがあるだろうか」と切り出したのです。「この歌のせめて歌詞だけでも読めば、なぜ君たちの反省の弁が人の心を打たないか分かるだろう」と諭(さと)したのです。
この「償い」というは実話からできた曲です。あるところに真面目な青年がいました。月末の給料日には郵便局へとび込むのです。会社の仲間は貯金が趣味のしみったれた奴と笑います。でも彼はニコニコ笑うだけでした。
実は彼は一度だけ大きな過(あやま)ちを犯しているのです。ある雨の日、運転をしていて、人をはねてしまうのです。葬儀場で「人殺し」あなたを許さないと奥さんから言われます。彼は頭を床にこすりつけ何度も謝りました。
それ以来、彼は給料日に仕送りを始めたのです。人が変わったように働き続けるのです。
償いきれるはずもないと彼もわかっていました。でも、せめてもと思い仕送りを続けました。
そして7年が過ぎたのです。彼の元に奥さんから手紙が届きました。
「もう送金はやめてください」と。
「彼を思い出して辛いです」と。
「どうかあなたの人生を元にもどしてあげてください」と。
償いきれないと思っていた彼は涙します。何度も何度も手紙を読んで涙流します。
これが「償い」の歌詞なんです。償うことは簡単なことではありません。どうか、その前にもう一度、人に頭を下げるような行動はないようにお互いに注意していきたいと思います。
交通事故などは本当に止めようのないこともあったかもしれませんが、たとえば、人を殴るとか、物を隠すとか、差別するとか、万引きするとか、自分で止めようのあることあると思います。どんなことをしても償いきれないのです。第一、成長すればするほどそんな自分を自分が許せないと思います。起こした過(あやま)ちを忘れることもできないと思います。
また、過去の過ちなどはいつまでも心の中に入れて生活して下さい。言い訳したり、正当化したりしていてはまた同じ過ちを繰り返すだけです。「本当の償いは一生、自分の犯した罪と一緒に歩むことです」。
今日は、裁判官の方と同じ気持ちになってみなさんにお話ししました。今、流している「償い」の曲を給食の時に流したいと思います。聴いて下さい。