学校日記

父を亡くし、母を津波に奪われ、それでも約束した甲子園へ

公開日
2015/08/19
更新日
2015/08/19

校長室から

「甲子園に連れて行ってね」母、博美さんの口癖(くちぐせ)でした。岩手県代表の花巻東の千田(ちだ)京平選手のお母さんです。博美さんは東日本大震災の津波で帰らぬ人となられたのです。京平君が中1の春でした。父、宰平さんは千田君が生まれてすぐ、心臓発作で亡くなくなられています。博美さんは京平君と五つ上の兄、晃平さんを一人で育ててみえたのです。

母、博美さんは京平選手の甲子園への夢を二人で追いかけ、それを生き甲斐として頑張ってみえたのではないでしょうか。しかし、あの震災が、さらに3人の家族に追い打ちをかけるように・・・。あの津波の中、悔しかったでしょう、辛かったでしょう、残した二人の息子さんを想って生き延びたかったでしょう。

月日は流れ、京平選手は野球の強豪校花巻東に進学しました。そして、スカウトされてきた選手と対等に勝負し、レギュラーの座をつかむのです。そして今年の夏、花巻東は甲子園に出場です。京平選手は母さんとの夢を実現するのです。最後の最後の親孝行だったのでしょうか。彼の帽子には「母を甲子園へ」と書かれています。ずーっと思ってみえたのですね。

花巻東は勝ち進むのですが、決勝で同じ東北の仙台育英に惜しくも負けてしまうのです。京平選手ご苦労様でした。お父さんを亡くし、お母さんまでも亡くし、辛かった、小学校、中学校時代だったと思います。

彼の頑張りは全国の方々にどれだけ感動を与えたのでしょうか。心より拍手を送りたいと思います。本校の生徒に伝えたいできごとでした。