朝会より 『言葉と心を使って言葉を選ぼう』
- 公開日
- 2016/10/17
- 更新日
- 2016/10/17
校長室から
高校時代の心ない恥ずかしい話を聞いてください。
高校時代は給食がなく、みんなは毎日お弁当をお母さんにつくってもらいもっていきました。高校は好きな仲間でごはんを食べるのです。クラスの中に比較的、人気者のS君がいました。高校2年で盲腸になり、それ以来あだ名は「ジョリ〜」と言われていました。そのジョリー君は、いつからか一人で食べるようになりました。そして、いつもお弁当にたまご焼きをもってくるのです。いや、よく見ると、卵焼きだけでほとんどおかずの部分を占めているのです。次の日も次の日も・・・。当時は今のようなキャラ弁はもちろんありませんが大抵、おかずは4種類くらいが普通だったと思います。だから弁当が貧相とかそんなことではなかったんです。
周りのみんなは、
「おい!今日も玉子だけだぞ」
「よっほど玉子が好きなんだ」
とささやくようになりました。
そして、あだ名は「ジョリー」から「玉子焼き」になりました。
ある日、病気など1回もしたことがない彼が学校を休みました。そして、朝のホームルームの時間、担任の先生から悲しい話を聞きました。
「彼のお母さんは病院に入院されていましたが、昨夜、亡くなられました」と。
みんな驚きました。いつも明るく、そんなこと一言も言わなかった彼でした。そして、とんでもないことを言っていた自分を悔やみました。
あのお弁当はお父さんが毎日彼にもたせたものか彼が自分で作ったものだと誰もがわかりました。彼にすまない気持ちで一杯でした。なんと恥ずかしいことをみんなで言ってしまったのだろう。「玉子焼き」と言われるたびにどんな気持ちになったのだろう。学校だけは母さんのこと忘れられる唯一の時間だった思うのです。それが僕たちの心ない言葉で母さんのこと思い出していたんだろうなと思いました。おそらくみんな一緒の気持ちだったと思います。
みんなで葬儀に出ました。何も語らず彼の家を後にしました。高校2年の苦い思い出です。
あれから何十年と経ちました。あやまる機会がないままに今日まできました。いつか、彼に謝りたいとずーっと思っています。
人を傷つけるようなことはもう言いたくないと思った17歳の秋でした。
さて、先生のこのような恥ずかしい話をしたのですが、君たちにはこのような過(あやま)ちをしてほしくないのです。人を傷付ける前に考えていただきたいのです。
どうでしょうか、例えば、人の身体的なことは言ってませんか。「チビ、背が低い。でぶ、ブスとか」、辛いでしょうね。一日が暗いものになります。
家の職業のこと言ってませんか。「玉子屋」と家が玉子の取引して見える生徒がいたんですが、「玉子屋」と言われていた彼、辛かっただろうなと思います。
異性のことなどで冷やかしていませんか。女生徒に男の子の名前言ったりして。彼女には本当に迷惑な話ではないでしょうか。
部活を辞め子がいたならどうでしょう。「あいつ辞めてよ〜」なんて言ってては余計に苦しめます。辞めるには相当、苦しんだと思うのです。
学校に久しぶりに来た子になんていいますか。「どうして休んでいた?」こんなこと聞きますか?苦しいから休んでいたんです。接し方が違うと思うのです。
生徒諸君、頭と心使って、言葉を選んで友達を大切にしてください。もう一度言います。“頭と心使って言葉を選ぼう”