32年経ってもお互いに覚えていた出来事
- 公開日
- 2016/11/11
- 更新日
- 2016/11/11
校長室から
昔、担任をしている時の話です。一人の生徒が学校が嫌で休んだのです。自分で電話してきたところが怪しいのです。「今日は頭が痛いので休ませてもらいます」と。勉強嫌いの彼でした。彼は県営住宅の宅地の中に別室に勉強部屋を建ててもらい、そこで生活していました。
家は片親で母さんは仕事に出かけていたので、今日、休んだことも知らないと思いました。心配したのは昼食です。腹へっているだろうなと思い、給食時にパンと牛乳とおかずをお盆で持って彼の家にでかけました。でも彼はノックしても出てこなかったです。
「ここに給食を置いておくから、食べておけよ!」
そう言って、去りました。そして5限が終わり、牛乳ビンを取りに行ったんです。するともともと食いしん坊な彼ですから、全て綺麗に食べてあり、牛乳ビンもカラになって置いてありました。
「明日、来いよ!」
顔を合わせることもなく、それだけで言って、牛乳ビンとお盆を下げてきました。
次の日、彼は朝から何もなかったように登校しました。彼に何も聞かなかったです。いつものとおり友達と楽しそうな姿がありました。そしてそれ以来は彼は学校を休まなかったです。
3年前、なんと彼にばったり会いました。この地区に住んでいるとのことでした。もう立派なお父さんになっていました。そして、彼はあの時の給食のことを真っ先に話してくれました。「あの時はありがとうございました」と。もう32年前の話なんです。教師っていいなと思いました。