学校日記

【校長日記】 歴史は思惑の積み重ね

公開日
2015/06/07
更新日
2015/06/07

校長日記

今日の教育講演会は、動物写真家の小原 玲 氏に「流氷の伝言−アザラシの赤ちゃんと地球温暖化−」というテーマで講演をいただきました。
その内容は後日お知らせします。

小原氏はもともと報道カメラマンでした。
なぜ動物カメラマンに転身したのか?
今回の公演で、その理由が特に印象に残りました。

それは、報道カメラマンは伝えるのが仕事なのに、伝えられないからです。

例えば、天安門事件。
数百から数万の犠牲者が出たといわれていますが、小原氏はじめ、広場内にいた13人の外国人ジャーナリストは一人の死体も見ていないのです。
広場に向かう人への水平発砲はありましたが、少なくとも、広場内では上や下に向けての発砲だったのです。

LIFE紙に載った小原氏の写真も、違う意味で取り上げられました。
すなわち、学生が抵抗しないようにリーダー達が手をつないで止めている写真が、戦車の進入を阻止しようとしている写真として伝わったのです。

ソマリアでも、10の悲しみの一つも伝えられない。
小原氏はそれをやりきれなく思い、動物写真家に転身したのでした。

歴史は、本当は事実の積み重ねのはずなのですが、実は思惑の積み重ねです。

原田 伊織氏の『明治維新という過ち—日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト 』を読むと実感します。
原田氏によれば、明治維新の英雄も、徳川幕府から見たら狂信的なテロリストです。
しかし、明治以降の政権が、薩長政府の正当性を主張するために、松蔭を英雄視したのです。
まさに、思惑の積み重ねで歴史をつくった例です。

江戸時代でも、新井白石は徳川綱吉や荻原重秀を徹底的に批判をした文書を残しています。
松平定信も、田沼意次を痛烈に批判しています。
後世の歴史家が、そうした文書を重んじたために、歴史は作られたのでした。
これも、思惑の積み重ねなのです。

歴史書を読むときは、誰がどんな立場で書いたかをふまえて読むことが大切なのです。