学校日記

ヤ行はなぜ「や ゆ よ」?

公開日
2017/08/27
更新日
2017/08/30

社会科お役立ち情報

夏休み中は、社会科に関係のある雑学を紹介しています。
今日は、ややハイレベルです。

いろは歌 は、全ての仮名を使って作られている歌で、手習い歌の一つです。「いろはにほへと」は誰でも知っています。

いろはにほへと ちりぬるを (色はにほへど 散りぬるを)

わかよたれそ つねならむ  (我が世たれぞ 常ならむ)

うゐのおくやま けふこえて (有為の奥山  今日越えて)

あさきゆめみし ゑひもせす (浅き夢見じ  酔ひもせず)


「いろは歌」と同じように、47文字のひらがなを1回ずつ使った歌「天地の詞(あめつちのうた)」も有名です。

あめつち ほしそら (天地 星空)

やまかは みねたに (山川 峰谷)

くもきり むろこけ (雲霧 室苔)

ひといぬ うへすゑ (人犬 上末)

ゆわさる おふせよ (硫黄猿 生せよ)

えのを なれゐて (榎の枝を 馴れ居て)

※ 最後の行の2つめの「え」はヤ行の「え」


「いろは歌」は47文字ですが、この歌は48文字です。ヤ行の「え」があるからです。万葉仮名にはヤ行の「え」が存在していました。

五十音というからには、おそらく、もともとヤ行には「い」「え」、ワ行には「う」に当たる音が、そしてもしかしたらワ行の「ゐ→為」や「ゑ→恵」のように、該当する文字(漢字)があったのかもしれません。

ところが、この「天地の詞」が作られた平安初期には、すでにヤ行の「い」、ワ行の「う」がありません。

さらに「いろは歌」がつくられたらしい10世紀後半には、ヤ行の「え」が消失しています。おそらく、「天地の詞」と「いろは歌」の間にかな文字が成立したのでしょう。

かつては、五十音それぞれに異なる発音があったのでしょう。五十音表やかな文字の成立過程、当時の発音を探る上では、おもしろい歌です。


ちなみに、鳥啼歌(とりなくうた)というのがあります。

とりなくこゑす ゆめさませ (鳥啼く声す 夢覚ませ)

みよあけわたる ひんかしを (見よ明け渡る 東を)

そらいろはえて おきつへに (空色栄えて 沖つ辺に)

ほふねむれゐぬ もやのうち (帆船群れゐぬ 靄の中)


作品としては最も文学的ですね。