【校長日記】 授業参観レポート −1−
- 公開日
- 2015/10/03
- 更新日
- 2015/10/03
校長日記
昨日、愛知教育大学附属名古屋中学校へ行って来ました。
1時間目の授業は、3年生社会科の授業です。
追究課題は、
格差社会の中で、経済活動を活発にするためには政府が同すべきなのか?
みなさんは、どう思いますか?
いかに格差を縮めるか
現実の問題を生徒に考えさせることはとても大切なことです。
大人なら、所得の再配分、すなわち、累進課税や社会保障の充実に目がいくでしょう。
また、正規雇用・非正規雇用の格差の是正、最低賃金の底上げといった、労働問題にも手を加えなければなりません。
ただ、ここでは、「経済活動を活発にするために」ということです。
三つの切り口が考えられました。
A 教育格差の解消 B 男女格差の解消 C 地域間格差の解消
授業が始まる前から、生徒のなかで、意見の絞り込みが行われました。
Aでは、「高校・大学の教育費の無償化」「教育の質の向上」です。
今でも、所得制限はありますが、高校はほぼ無償化されています。大学も、無利子奨学金制度があります。
世界では、大学まで無料の国がいくつかあります。フィンランドでは国家予算の12%が教育に使われています。
これに対して、日本はGDPに占める教育機関への公的支出の割合は、加盟国中で最下位なのは有名な話です。それだけ、家計にしわ寄せがいっているのですが、生徒が、そういった資料を提示しながら意見を言うと、もっと説得力があったと思います。
「教育の質の向上」は、それにより、学習塾に行く子が減り、その分消費に回るということでした。これは、疑問符が付く意見です。反対意見が出てもよい場面でしたが、スルーされてしまいました。
Bでは、保育園の無償化、ワークシェアリングが取り上げられました。
ある生徒が、「女性は非正規雇用が多い」と発言し、雇用問題に話が進むか?と期待したのですが、これ以上繋がりませんでした。もったいない・・・。
所得制限の中で保育料を変えるという意見に落ち着きましたが、これは現実に行われていることですね。
ワークシェアリングはどうでしょうか?
確かに失業者は減りますが、1人当たりの賃金は下がるので、「経済活動の活性化」に繋がるかどうかはわかりません。
Gでは、交通網の発達と、過疎地域の法人税を下げるという話がありました。
交通網の発達では、ある生徒が鋭い意見を述べました。「逆に、過疎地域から都会に人が移る。」
田中角栄は「都会から田舎へ」のスローガンの元、日本列島改造しようとしましたが、結果は、過疎化がより進展しました。この生徒の言うとおりだったのです。
企業誘致では、現実に自治体が多くのおいしい条件を与えています。そういったところも、データが示せればと思いました。
法人税も、米国と並んで世界で最も高いレベルを、やっと下げてきたところです。都会の法人税を上げるというのは、難しい問題です。
全員参加で、とても活発に意見が出たので、それぞれもう一歩ずつ踏み込むと、より社会認識が深まったのに・・・という思いです。
「みんなとてもよい意見を言ってくれたけど、それぞれ大人も考えているんだ。」
こんな結論になってもいいのではないかと思いました。
とても見応えのある授業でした。