朝礼より 【先生】
- 公開日
- 2012/11/05
- 更新日
- 2012/11/05
校長メッセージ
体育館で朝礼を行い、校長より以下の話がありました。
作文を読んでみたいと思います。題は「ある教師のこと」です。
ある、女性の先生が5年生の担任になった時、一人、服装が不潔でだらしなく、勉強もさぼってばかりで、少し暗い少年がいました。
ある時、少年の1年からの記録をが目に止まりました。「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、将来が楽しみ」と書いてありました。『間違いだ。他の子の記録に違いない』そう思い、2年の記録を読んでみました。「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する」と書かれていました。3年では「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りする」後半の記録には「母親が死亡。希望を失い悲しんでいる」とあり、4年生になると「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子どもに暴力をふるう」と書かれていました。
その担任の先生は胸に激しい痛みが走りました。私のクラスのこの子が、突然の深い悲しみを生き抜いている。それにも気が付かなかったとは・・・。先生にとって目を開かれた瞬間でした。
放課後、その先生は少年に、「先生は夕方まで教室で仕事するから、あなたも勉強していかない。わからないところは教えてあげるから」と声をかけました。
それから毎日、少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けました。授業で少年が手を初めてあげた時、すごく嬉しかったそうです。そうです、少年は自信を持ち始めていたのです。
クリスマスの午後でした。少年が小さな包みを先生の胸に押しつけました。あとで開けてみると香水のビンでした。亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。ある日、先生はその一滴をつけ、夕暮れに少年の家に行きました。雑然とした部屋で独り本を読んでいた少年が気が付いて飛んできて、先生の胸に顔を埋めて、叫びました。「ああ、母さんの匂い!」と。
6年生では、先生は少年の担任を外れましたが、卒業の時、少年から一枚の手紙が届きました。「先生は僕の母さんのようでした。いままで出会った中で一番の先生でした」と書かれていました。
それから6年が経ちました。また、手紙が届きました。「明日は高校の卒業式です。僕は5年生で先生に担任していただき、とても幸せでした。おかげで奨学金をもらい医学部に進学することができました」
それから、さらに十年後、また手紙が届きました。そこには先生と出会えたことへの感謝と父親に叩(たた)かれた経験があることから患者の傷みがわかる医者になれると記されていました。そして、「僕はよく先生のことを思い出します。大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は5年の時、担任してくださった先生です」と書かれていました。
それから1年後・・・。届いた手紙は結婚式の招待状でした。「母の籍に座ってください」と一行、書き添えられていました。
先生方・・・、児童のみなさん・・・。以上で先生からの話を終わります。