遠藤未希さん、花嫁姿はみんなの心の中でいつまでも
- 公開日
- 2013/09/27
- 更新日
- 2013/09/27
校長室から
「大津波警報が発令されました。高台に避難してください」
防災無線の呼び掛けが町内に響き渡りました。
平成23年3月11日午後2時46分、宮城県南三陸町の防災対策庁舎2階で町職員遠藤未希さん(24)は放送室に駆け込み、防災無線のマイクを握りました。
「6メートルの津波が予想されます」「異常な潮の引き方です」「逃げてください」
防災無線が30分も続いたころ、津波は庁舎に迫りつつありました。
「もう駄目だ。避難しよう」。上司の指示で遠藤さんたちは一斉に席を離れました。
同僚のみなさんは、遠藤さんが放送室から飛び出す姿を見られていますが、屋上へ逃げたはずだった遠藤さんの姿は波が退いたあとには見えなかったそうです。
南三陸町の住民約1万7700人のうち、半数近くが避難して命拾いされました。遠藤さんは、多くの同僚とともに果たすべき職責を全うされました。
専門学校を卒業後、町役場に就職されます。専門学校で知り合った男性と、町役場に婚姻届を出されました。(写真)両親は当初、2人姉妹の長女が嫁ぐことに反対されました。「どうしてもこの人と結婚したい」。男性が婿養子になると申し出て、ようやく両親も折れられ、9月10日には、宮城県松島町のホテルで結婚式を挙げる予定でした。
母、美恵子さんは「素直で我慢強い未希が人生で唯一、反抗したのが結婚の時。それだけ、良い相手と巡り合えたのは幸せだったと思う」と話されています。
そして、その夢も果たせず、遠藤さんは亡くなられました。
遠藤さんの声は、住民の記憶に刻まれています。
山内猛行さん(73)は防災無線を聞き、急いで高台に逃げた。「ただ事ではないと思った。一人でも多くの命を助けたいという一心で、呼び掛けてくれたんだろう」と感謝されています。
そして、昨日、最後まで遠藤未希さんがマイクに向かい必死に呼びかけた防災庁舎の取り壊しが決定しました。建物はなくなりますが遠藤さんの必死に呼びかけた姿はいつまでも人々の心に残るのではないでしょうか。
「本当にご苦労さま。ありがとうございました」(校長)