学校日記

約 束 「甲子園に絶対いくんだ」

公開日
2015/03/25
更新日
2015/03/25

校長室から

ちょっといい本当にあった話を仕入れてきました。聞いてください。
     「 約 束 」
小学生のときに好きだった男の子との思い出です。6年生で初めて同じクラスになったのですが、すごくぶっきらぼうで最初は苦手でした。でも、何回も席替えで隣同士になるうちに少しずつ仲がよくなり、ぶっきらぼうだったのも単に女の子が苦手だったと分かりました。
「甲子園に行くんだ」と大好きな野球に一生懸命取り組んで毎日泥だらけになっていたり、
さりげなく皆に気遣って仲間はずれを作らないようにしたり。そんな彼の姿を見ているうちに、いつの間にか好きになっていました。

小学校卒業を控えた頃、私は私立の中学に行くことを決めました。合格が決まった後に彼に話すと、
「そんなの聞いてない」と怒ってしまい、卒業式まで口を利けなくなってしまいました。
卒業式当日、せめて最後くらい仲直りしたいと彼を探すと、向こうから声をかけられました。
「おまえは新しい学校で頑張るって約束しろ。その代わり、俺は甲子園行くから。絶対守るから、絶対守れよ」
私の返事も聞かず、その一言だけを言って彼は友達のところへ行ってしまいました。私は何故か、追いかけられませんでした。

それから、彼と会うことはまったく無く、6年の月日が流れました。卒業式の約束のことは、流れた月日の分、埋もれてしまっていました。高校三年生の夏ということで受験勉強に忙しかった私は、友達の家で勉強していました。

そういえば、今日の甲子園の試合、うちの県の代表じゃなかったっけ?友達がテレビをつけると、見慣れた県内の強豪校のユニフォーム。何の気なしに見ていると、その中にどこかで見た顔がありました。
まさか、と思って選手の名前を調べると、その中には彼の名前が。その瞬間、卒業式の約束と、小学生のときの彼の顔が一気によみがえりました。

顔を真っ赤にしてグラウンドを走る彼を見て、私はいつの間にか泣いていました。小学生のときの、口約束です。きっと彼は私との約束は覚えていなかっただろうし、大好きなことを頑張って夢を追いかけた結果だと思います。でも、このときの私はすごく幸せでした。

付き合ってもいなければ、お互いの気持ちを確かめることもありませんでしたが、初恋からのこの6年越しの思い出は、今でも私の宝物です。