学校日記

学園ドラマはテレビの中、それを観過ぎたのは先生でしょうか

公開日
2016/10/06
更新日
2016/10/06

校長室から

学園ドラマを観て育った先生方多くみえませんか。学園ドラマは生徒の反発や他生徒とのトラブル、そして教師の心開いた接し方、そしてその問題生徒の「先生、悪かった」こんな流れなんです。それが1時間の番組の中で行われるのです。

現場においてもすぐ結果を求める教師が多すぎるのです。子供達の心は今に急にできあがったものではありません。すぐに「先生、俺が悪かった」「私が悪かった」の言葉を引き出そうと、説得したり、諭(さと)したりと必死になるのですが、ある程度の生徒はそれで十分なんです。でも、もっと心痛めている生徒には残念ながら通用しません。「学園ドラマの見過ぎでは」と言いたくなります。
 
昔、ホックが開いていて注意した生徒が態度悪く、さらに注意したことがありました。何も言わず、2時間、お互いに何も話さず、もう帰れとも言えず、向き合ったいたんです。やはり彼は怒りをこらえていたんでしょう。次に日は木刀をもって学校に来ました。担任の先生に取り上げていただいて大事にならずに済みましたが・・・。

担任はベテランの先生でした。進級した時もその生徒の担任でした。なんと彼に体育教科委員を指名するのです。体育教科委員と言うと、明日の授業の用意を教科担任に聞きに行く仕事があるのです。なんといっても私こそ、その体育の教師なんです。

教科委員は2人で組むのです。彼は何も話さず、隣でいました。何も話さず、春が過ぎ、夏が過ぎていきました。秋も深まる、12月のことでした。その日はサッカーのゲームをしていたんです。彼と同じチームでした。試合の中でなんと彼からパスをもらったのです。これが妙に嬉しかったのを覚えています。でも、それで話すかというと話すものでなく、またいつもの通りでした。

そして3月の卒業前の最後の体育の授業でした。体育館で最後の授業を行い、あいさつをしたんです。「先生1年間有り難うございました」と。そして生徒達も出て行きました。誰もいなくなった体育館で職員室に戻ろうとした時でした。彼が戻ってきたんです。
「忘れものした」と。それは嘘だとすぐわかりました。

「先生・・」彼はそう言いかけたのですがそれ以上は言葉が出てこなかったです。二人向き合って泣きました。1年以上かかったのです。この日が来るのが1年以上もかかったのです。ずーっと彼の心の中にあの日のことがあったのです。「忘れ物をした」それこそ「ごめん」の言葉だったと思うのです。

もう何十年も前の話です。生徒指導は焦らず、その生徒を信じて、すぐに結論求めずです。中には、「それでは他の生徒への示しが付かない」という若者もいますが、では他の生徒はそんな心配な心の育ち具合なんですかと反対に聞いてあげたくなります。一人一人は正しく見ていると思うのです。「自分の気持ちが治まらない」という先生もいるでしょう。でも彼こそ心傷む生徒なんです。助けを求めている生徒なんです。これから一生懸命接して治してあげるのが教師だと思うのです。若い先生に勉強して頂きたいことでした。