【校長日記】 色丹島訪問記 −30−
- 公開日
- 2015/08/17
- 更新日
- 2015/08/17
校長日記
8月3日(土)13時から15時の2時間、穴澗初等中等学校において、穴澗初等中等学校の先生方とわれわれ訪問団員とが意見交換を行いました。
2グループに分かれた、その第2グループの様子を紹介します。今回はその2回目。
団員:この学校は1年から11年生まである。日本は6・3・3制だが、どうしてか。複式学級か。
教頭:その方が便利だから。町が小さいから仕方がない。
ロシアは国として1年生から11年生までのシステムをとっている。しかし、昔は、小と中が分かれていたこともあるし、男女別の時もあった。
ダネリア:いろんな学校があり、サハリンのユジノサハリンスクの学校は、小学部と中学部は別々にやっている。
来年できる斜古丹の学校は、幼稚園から一緒にやるそうだ。地域によって多少のバリエーションはある。
それと、普通は11年終わってから大学へ入る子もいるが、9年・10年やって、カレッジに行って、特殊な勉強をやっていく子もいる。
団員:島の子は、将来島から出ていくが、その心構えを教えるのか。
ダネリア:色丹は小さいので、大学などの特別な学校を作る意味がないので、子ども達は本土などの大学へ行く。また、9年を終えて、サハリンの学校で学ぶ子も数人いる。精神的に子どもが準備をすることもあるが、高等教育への理解は親の間に浸透している。
しかし、資格を取っても、実際に社会で生かせるわけではない。最近の調査では、大学卒の80%が自分の専門の仕事に就いていない。特に文系に多い。
我々としては、卒業の後は、必ず大学に行かなくてもいいのではないか、(専門学校等で)専門の知識を得た方がいいのではないかと思っているが、両親の考えを変えるのは難しい。
逆に質問したい。日本では、こういう問題はないのか?工場で働く人なのに、大学を出た方がいいと思っているのか?
団員:個人的には、日本では、進学率を高めたいと思ってもやっと50%を越えるようになってきた。いわゆるブルーカラー、高校を卒業して就職しようとすると厳しい。
ロシアのカレッジと、日本の専門学校とは違うかもしれないが、高校の後は、大学に行くように勧めている。
団員:中学校の進路選択は、経済の様子によって変わってくる。たとえば、高卒後の就職率が高いときは、実業系の人気が高く、就職率が低いときは、大学を目指す子が多い気がする。
ダネリア:大学を卒業した人は、自分の専門を生かす仕事を見つけることはできるのか。
団員:それは厳しい。日本もロシアと同じような状況である。
ダネリア:ロシアでは、大学の数が増えて質が落ちた。卒業生の質がよくないので、大学の数を減らす傾向にある。それは日本でもあるのか。
ただ違うのは、ロシアの大学は国立で、ほとんどが無料。大学には、一部は有料な部分もある。優秀な子は無料でいけるが、成績の悪い子は、お金を払って入る大学もある。
団員:日本の国立大学は入るのが難しいので、私立大学の方が多い。レベルの違いはあるが、国立でも初年度80万円以上かかる。私立だと、理系と文系で異なるが、100万から150万円かかる。日本人の平均年収が300万から350万円なので、国立に入ることができても保護者の負担は大きい。
ダネリア:奨学金とかローンのしくみはあるか。ロシアでも、奨学金の額は少ない。
団員:日本は、アメリカやロシアに比べたら少ない。日本には、約900の大学があり、高校生の数をまかなえるだけの定員がある。しかし、それでも進学率は50%を越えた程度。
高学歴化が進んでおり、大学院を出ても就職率が5割を越えた程度しかなく、どうしてよいかわからない。
(ここでノリチェバ先生が退席。入れ替わりにマルチェンコ先生が参加。)
ダネリア:ノリチェバ先生のおかげで色丹の子ども達のスポーツレベルが高い。
団員:日本では、発達障害やいじめ、不登校などの問題があるが、こちらではどうか。
ダネリア:ロシアは大きいがここは小さい。こちらで27年間働いているが、いじめや発達障害などには出会ったことがない。ただ、マスコミ報道を聞くと、ロシアの中ではあると聞いている。発達障害児などはおかげでいないし、授業をさぼる子、校内で喫煙する子はいない。
マルチェンコ:ダネリア先生の教え子で、現在、授業の補助をしている。確かに昔はいなかったが、最近は子ども達が図々しくなって、先生にわからないようにたばこを吸う子もいる。
ダネリア:私が考えるのは、今のところはまだ古い伝統が残っている。なぜなら、先生の年齢が高いから、年上の先生を尊敬しなさいというモラルを教えている。
教頭:先ほど、教室を見てもらい気づいたと思うが、ゴミが落ちていないし、壁のへこみ、机の落書きもなく、物も壊れていない。(公共物を)大事にしようとする心は育っている。
ダネリア:日本にもいろんな学校があり、状況もいろいろだと思うが、私が思うには、先生の教え方によっているのではないか。
団員:秩序を教えることが基本だ。1年生から11年生までが一緒に暮らすことのメリットは。
ダネリア:この学校はユニークだと理解してほしい。小さいところなので、家族のように過ごしている。大きい子が小さい子によいイメージを与えようとしている。
しかし、よその学校では、逆に、大きい子が悪い見本を見せる場合もある。だから分けようということもある。
教頭:小さい町なのでみんな顔を知っている。家族みたいなものだ。
明日に続きます。