学校日記

ラダー効果

公開日
2014/05/24
更新日
2014/05/24

校長室から

ある時、村を歩いていた旅人が、石を積んでいる4人の職人に出会いました。
旅人が「何をしているのですか?」と質問したところ、職人Aは「石を積んでいる」と答えました。そして職人Bは「壁を造っている」と答えました。
さらに職人Cに同じ質問をすると、「教会を造っている」と答えました。さらに歩を進め、4人目の職人Dにも質問をしたところ、Dは「私は人の心を癒す空間を造っている」と言いました。

A、B、C、Dの4人の職人は、すべて同じ石を積むという仕事なのに、質問に対する回答はそれぞれ異なっています。職人Aは「石を積んでいる」という「行為のレベル」を、職人Bは「壁を造っている」という「目的」を、職人Cは「教会を造っている」という「大目的」を、職人Dは「人の心を癒す空間を造っている」という「意味」を答えています。

では、この中でどの職人が、自分の仕事に対して高いモチベーションとやりがいを持って、取り組めているのでしょうか。

察しの通り、「C」「D」の職人です。

CやDは、自分の仕事の必要性を認識し、その「意義」と「価値」を見出して取り組んでいるので、ゴールに向かって邁進することができます。一方、職人Aは仕事を「行為レベル」で捉えているため、その目的を把握できず、この仕事に時間を費やすにつれて、場合によっては、やらされている感が募るようになり、モチベーションが低下していきます。

「ラダー効果」とは、このように、まるで「ラダー(はしご)」を上っていくかのように、視点の抽象度を引き上げ、行動の「意義」や「価値」といったものをきちんと捉えることで、自身のモチベーションを高め、行動の質をも向上させていくというものです。

私たち大人は、物事に対して、どのような意識で臨むといいのでしょうか。
「掃除をしている」のか「気持ちよく生活できるよう、環境を整えている」のか。
「ご飯を作っている」のか「健康でいられるよう、食生活を支えている」のか。
ちょっと、意識の持ち方を考えると、取り組み方も変わるように思います。

教師も「漢字を教えている」ではなく「自立したときに困らない語彙を身につけさせている」となれば、その漢字のポイントやパーツの意味など、一歩掘り下げたところまで指導できるようになるでしょう。

そして、子ども達には、発達段階に応じて、「行為」→「目的」→「大目的」→「意味」と意識のステップアップを図りたいものです。「漢字を覚えている」から「たくさんの言葉を覚えるようにするため」に。そして「将来のために必要な知識を身につけている」と。少しずつ、その「意味」についても理解させていきたいものです。