2014.09.12 出力の大切さ
- 公開日
- 2014/09/12
- 更新日
- 2014/09/12
校長室から
ちょっと長文ですが、学習について耳寄りなお話をひとつ。
「勉強ができない」「なかなか覚えられない」・・・。よくそんな言葉を子ども達や保護者の方から聞くことがあります。
池谷裕二東京大学大学院薬学系研究科教授は、「出力=復習の大切さ」を以下のように言っています。
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そもそも、脳に情報を入れるだけで記憶が完了すると考えるのは大きな間違いです。脳にも入力と出力があって、情報を入れる過程と、その情報を使ってみる過程の両方を考慮しなければいけません。そして、知識を蓄えるのにどちらが重要かというと、実は出力なのです。学習に即して考えるなら、出力は復習に相当します。ただし、大事なのは復習とは参考書の再読ではなく、問題集を解くこと。参考書は入力に使うものなので、復習になりません。
意外に思われるかもしれませんが、復習の大切さが脳科学で証明されたのは、ごく最近のことです。学生に彼らがまったく知らないスワヒリ語の単語を覚えてもらうという実験から分かりました。英単語とそれに対応するスワヒリ語が40組書かれた紙を配り、学生に丸暗記してもらいます。その後テストをして、全問正解するまで繰り返すのですが、下記のように異なる条件の四つのグループに分けて行われました。
(A)40単語を記憶する→テスト→単語リストを一通り覚え直す→40単語を再テスト
(B)40単語を記憶する→テスト→間違えた単語だけ覚え直す→40単語を再テスト
(C)40単語を記憶する→テスト→単語リストを一通り覚え直す→テストで間違えた単語だけを再テスト
(D)40単語を記憶する→テスト→間違えた単語だけ覚え直す→テストで間違えた単語だけ再テスト
どのグループの学生も、記憶とテストのサイクルを4、5回繰り返すとだいたい満点が取れたそうです。
ここで差がつかないことも興味深いのですが、1週間後にもう一度集まってもらって同じテストをしたら、まさに劇的な結果となりました。40単語すべてを再テストしたグループ(AとB)は80点ぐらいだったのに対し、残りの二つのグループ(CとD)は20点前後しか取れなかったのです。つまり、問題を再度全部やったほうが記憶の定着率が高かったということで、特に、間違えた単語だけ覚え直してもテストを全問やれば効果が高かったのは特筆すべきです(Bの場合)。情報を詰め込んだら試しに使ってみるのがどれほど重要かを、この実験結果はまざまざと示しています。
(※「ベネッセ BERD NO.13 2008」より引用)
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1年間のスパンで見れば、1学期の基礎的な内容から、少しずつ、発展した内容や、深まった内容にシフトしていく2学期です。
また、6年間のスパンで見れば、3・4年生になると、低学年の学習内容から、全体的に内容が発展したものになり、「難しいな」と感じる子が表れてきます。5・6年生になると、小学校の学習内容の知識を総動員し、発展させたものになり、「勉強は嫌い」と感じる子も表れてきます。しかし小学校での学習内容は、まだ中学校にとって「基礎」です。
1年間の中で、いかにこの時期の学習が大切か。また、小学校の積み上げがいかに大切か、ということになります。
ぜひ、池谷教授の方法で、自主学習に取り組んでみてはいかがでしょうか。
特に、中学生以上のお兄さん、お姉さんは、学習量が多くなりますが、それだけに、きちんと記憶するためには有効な手段だと思います。
「○○の秋」の中に「学習の秋」もあります。
私は、決して勉強が得意であったりしませんが、新しいことを知ったり、学んだりすることは好きです。
出力することを大切しながら、知識を深め、学ぶ秋にしたいと思います。