令和2年度江南市横田教育文化事業弁論大会 その3 「心の動くデザインを。」
- 公開日
- 2020/11/08
- 更新日
- 2020/11/08
全校生徒
その、一瞬で。
三枚と、数秒で。
その瞬間、何か、自分の心の奥底から、言葉にできないような感覚が一気に押し寄せ、目の前がキラキラして、ワクワクして、じっとしていられない気持ちを抱えながらそれを眺め続けていました。
その時、気付いたのです。これがデザイン。これがデザイナーというものなのかと。
デザイナーになるのが私の夢です。飲み物やお菓子のパッケージ、ポスター、イラストなど文字や色彩から、世界そのものを感じてもらえるような、そして、人と何かをデザインによって繋げられるようなデザイナーになりたいです。
沢山の言葉を使って話せば、沢山の事を伝える事ができます。しかしデザインは、それらいかに多く伝えられるかという事を考え抜き、余計なものをそぎ落としていく作業なのではないかと考えたことがあります。
私は幼稚園の頃から絵を描く事が趣味でした。例にもれず女の子ばかりを描いて、周りのみんなにほめられると嬉しくなり、自分で考えた服を描いたりしていました。小学生の頃に言っていた将来の夢は「ファッションデザイナー」でした。
しかし、高学年の頃私は気付いてしまいました。私は服のデザインを作りたいと思っているわけではないのだと。
そして、ファッションデザイナーではないデザイナーということを考えていたとき、ふと、今この手に握っているペンも、座っているイスも、飲んでいるペットボトルの包装も、目の前にある全てのものが「デザイン」なのだと気付き、目が覚める想いがしました。デザインの世界はこんなにも幅広いのだと。
これらが世に出される前には、何百とある案が出され落とされ、そして選ばれる。誰かに何かを伝えるために考え抜かれ、無駄を削ぎ落としていく。それを自分が生み出し、人を感動させることを創造するとワクワクします。「デザイナー」という仕事に魅力を感じずにはいられませんでした。
今年の2月頃、愛知県立芸術大学の卒業制作展に行きました。
やはりつい足が向いてしまうのは「デザイン」のコーナーです。使いやすさ、どんな人が使うのかという視点からまとめたものや、一風変わったおもちゃ、何を求めるかに合わせた茶葉と店内の雰囲気を合わせてデザインしたものなど、「これもデザインの範疇なのか」と思わされる刺激的なものが沢山ありました。
その中で、ふと足を止めたのが、とある飲料水の、コマーシャルビデオと宣伝用ポスターです。三種類の味に合わせてそれぞれ色とモチーフを変えていました。
それを目にしたその、一瞬で。三枚と数秒で味が伝わり、香りを感じる事ができたような気がしました。その商品を、実際に手に取ってみたいという衝動に駆られました。私がこうなる事を予想して、デザインされたと思うと驚きが隠せませんでした。
今まではただ好きだからという理由で、感覚的に絵を描いていました。理論や知識が必要なことは知っていましたが、決まった事に囚われてみんなと同じ絵を描きたくない、私だけの世界観を表現したいと、生意気な事を思っていました。
でも、私の感じている世界観を表現し、私以外の人に伝えるためには、技と理論と知識が必要なのだと、数々の作品を見て思い知らされました。今まで素通りしていた美術本たちに目が行き、読めば読む程、絵には理論があり、その上で想いを反映させた自分の絵があるのだということを実感しました。
私は、人の心を掴み、感動してもらえるものを作れるようなデザイナーになりたいです。人と何かを繋げ、社会に貢献する事のできるようなデザイナーに。